【アドラー心理学入門】 岩井俊憲 かんき出版
こんな人に読んでほしい
『嫌われる勇気』でも出てきたアドラー心理学
自分の中の今までの概念と違いすぎて理解しづらかった方もいるかと思います。
そんな方に読んでほしい入門編です。
「なんだかよくわからなかった。」では残念なので、「そういう考え方もあるんだな〜」と理解できたらいいなあと思います。
アドラー心理学の5つの理論
1.自己決定性 人生は自分が主人公
2.目的論 人の行動には目的がある
3.全体論 人は心も身体も結びついたたった一つの存在
4.認知論 誰もが自分だけのメガネを通して物を見ている
5.対人関係論 全ての行動には相手役がいる
アドラーが提唱している理論をまとめるとこの5つになります。
1.自己決定性
おかれた環境をどのように捉え、どのように対応するかを決めるのは自分自身です。
自分の気持ち、自分の行動を決めるのも全て自分自身と言うことです。
アドラーの提唱する自己決定性の判断基準は、自分と他者にとって建設的か、非建設的かが重要であるとしています。
建設的とは、現状をより良くしようと、意見や考え方、発言などが積極的であったり、前向きであったりして、物事を前進させるのに有益であることです。
非建設的とは、建設的の反対で、批判ばかりして解決策を出そうとはせず、積極的でなかったり、後ろ向きであったりすることです。
自己決定を行うときに、建設的に自分の行動を決定することが大事であると言うことです。
2.目的論
人間の行動には必ず目的があります。
アドラーは「原因論」を否定しています。原因論は心理学者・精神科医であるジークムント・フロイトが提唱しました。これは「物事には全て原因があって結果がある」とする考え方です。一般的にはこの考えが広まっています。
ですが、原因によって結果が決まるとしたら、同じ出来事が起こった人は同じ人生を送ることになるはずだけれど、そうはなっていません。人によってその事をどう捉えどう生きているかは異なります。
人は目的があって行動をすることで結果を作り出しているため、原因は関係ないということです。
原因論で物事を考えてしまうと、今うまく行ってないのはその原因のせいだとマイナス思考になってしまうことがあります。目的論で考えると、目的のために行動するので前向きになりポジティブ思考でいることができます。
何か物事がうまくいかないときは原因を探るより、目的に目を向けてみましょう。
最初のうちは何が原因で何が目的か分かりづらいかもしれませんが、マイナス思考をプラス思考に置き換えるように少しずつ目的論に慣れていくといいでしょう。
今まで原因論を思っていた人が、目的論で行動するようになったら、考え方や価値観がガラリと変わることになるでしょう。
3.全体論
心と身体は分離されうる物ではなく、ひとつのものであるという考え方です。
人の心の中に矛盾はありません。理性・感情、心と身体は全てつながっています。
そしてその全体として目的に向かって生きています。
心が矛盾することというのは、例えば「痩せたいけどダイエットを頑張れない」です。これに矛盾がないということはどういうことかというと、「ダイエットを頑張らない」建設的な目的が存在するということです。
ダイエットを頑張らない目的とは何か。それはあなた自身の幸せです。痩せることよりダイエットを頑張らないことの方が幸せなのです。痩せたいことが目的の人は、痩せることが幸せなのでダイエットを頑張れます。
心と体は分離していないので、いつでも自分から建設的な目的に向かって行動できるということはありません。そのような時は、もう一度目的論に戻り、どうしてそういう考え方になったのかを認めた上で、新しい価値観を持てるようになっていけばいいのです。
4.認知論
誰もが自分だけのメガネを通してものを見ています。恋は盲目とはこのことです。
自分だけのメガネとは、自分自身や世界(人生・他者など)に対するその人特有のものの見方・考え方・価値観のことです。これを『私的倫理』と言います。
私的理論の中でも、特にゆがんだ発想をして、自分自身も生きにくく、原因との間でも摩擦を生じてしまうような考えを『ベイシック・ミステイクス』と言います。
5つのベイシック・ミステイクス
- 決めつけ 可能性に過ぎないことを自分で勝手に決めつけてしまう。
- 誇張 物事を拡大して大袈裟に捉えてしまう。
- 見落とし ある部分だけを切り取って見て、大事な側面を見落としてしまう。
- 過度の一般化 何か一部うまくいかないことがあると別のこともうまくいかないと思い込む。
- 誤った価値観 自分が無価値で「自分には生きる価値がない」などと自滅的に捉えてしまう。
ベイシック・ミステイクスのゆがんだ思い込みから抜け出すための方法は3つあります。
- 「本当にそうなの?」と疑い、根拠があるのか探る
- 「またやってしまったな」と自覚する
- 「どうすればいい方向に向くだろう?」と建設的に考える
現在の私的論理がベイシック・ミステイクであるか認識した上で、その方法から抜け出す価値観・考え方ができるようになると、ゆがんだ発想をせず、ポジティブに生きやすくなります。
5.対人関係論
アドラーは「人間の悩みは全て対人関係によるものだ」と言っています。
全ての行動には必ず相手役がいます。
そしてその相手役は自分自身であることもあります。
勇気づけとは
アドラー心理学では「勇気づけ」という言葉があります。「ほめる」でも「しかる」でもなく勇気づけです。
勇気づけとは、自分や他者に対して困難を克服する活力を与えることです。
勇気づけの3つの要素
・リスクを引き受ける能力:ここを越えればもっと成長できるという、人生のリスクに直面した時勇気のある人は思い切ってチャレンジすることができます。
・困難を克服する努力:「困難は克服できない障害ではなく、それに立ち向かい克服できるものなのだ」という意識を持っていて、困難を味方につけることができます。
・協力できる能力:目標に向けて他者と力を合わせること、自ら他者に貢献することです。
勇気づけができる人には6つの特徴があります。
- 尊敬と信頼で動機付ける
- プラス思考
- 目的(未来)志向
- 聴き上手
- 大局を見る
- ユーモアがある
人を勇気づける7つの習慣
1.加点主義:他者に対して常に肯定的な態度で接し、成長や進歩を共に喜ぶ
2.良い出し:他者のできているところや良いところに注目し、そこを認める姿勢を持ち続ける
3.プロセス重視:結果重視ではなく、目標に向かって行動している過程を重視する
4.協力原理:周りとの比較や差に注目して競争させるのではなく、相手の長所や持ち味を認めながら、みんなの共通の目標に向かって協力し合う
5.人格重視:「罪を憎んで人を憎まず」相手に絶対的な信頼感を持って接する
6.失敗を受容:他者の失敗を責めるのではなく「失敗はチャレンジの証」と受け入れる
7.聴き上手:相手の話したいことに耳を傾ける
人を勇気づける習慣を身につけて、自分や他者の困難な課題を乗り越えましょう。
共同体感覚とは
共同体感覚は、家族・地域・職場などの中で「自分はその一員なんだ」という感覚を持っている状態のことを言います。アドラー心理学ではこの感覚を高めることを重視しています。
共同体感覚を持っている人の特徴
- 仲間が興味を持っていることに関心を持っている
- 自分は所属グループの一員だと言う感覚を持っている
- 積極的に仲間の役に立とうとする
- 関わる人たちとお互いに尊敬・信頼しあっている
- 進んで協力しようとする
共同体感覚を持つことは、精神的な健康のバロメーターになります。
共同体感覚のある人は、自分を理解し、長所も短所も欠点も含めた、ありのままの自分を認めて受け入れることができます。(アドラーはこれを「自己受容」と呼んでいます。)
感情の役割と目的
自分を知るには、まず自分の感情を理解することが重要です。
感情は、身体・思考・行動と密接に関連しています。思考が担う「理性的回路」に対して「非理性的回路」の役割を担っています。また、行動に向けて燃料を供給する役割を果たしています。
「こうあるべきだ」という考えが裏切られたことによって怒りの感情が湧いてくるのは、思考と感情がつながっている証拠です。
怒りはどこからくるの?
怒りの目的4つあります。
①支配:上司と部下、先生と生徒などの関係において相手を支配するため
②主導権争いで優位に立つこと:夫婦間、同僚間、友人間などの関係において優位に立つため
③権利擁護:人の権利を脅かされることを守るため
④正義感の発揮:ルールを守らない人に対する怒りや①〜③の目的も入り混じる
怒りの相手役はほとんどは他者ですが、自分自身であることもあります。この時の怒りは激しい自己嫌悪や自分を責めてしまっていることが多いです。
実は、怒りは「怒り」という感情だけで成り立っているわけではありません。怒りという感情は二次感情です。
一次感情には 寂しい・つらい・心配・悲しい・苦しい・悔しいという感情があります。それを上手く伝えることができないため怒ってしまいます。
「こうなってほしい。」「相手に受け入れてほしい。」など、相手に伝えたい場合は、怒りをぶつけるより、一時感情を相手に伝えたほうが効果的で建設的です。もし自分が怒っているなと思った時は、一度冷静になり、自分の一時感情に注目してみましょう。
劣等性・劣等感・劣等コンプレックス
劣等性:身体に生まれながらの障害があること 人生の途中でハンディキャップを持ってしまった事実
劣等感:主観的に、自分のどこかが劣っていると感じること
劣等コンプレックス:自分が劣等であることをひけらかして、人生で取り組まなければならない課題を避けようとすること
客観的に見ると劣等ではないのに、自分は劣っていると感じる人もいれば、客観的に見ると劣等に見えるのに、劣等感なんて感じていないという人もいる。劣等感を感じる人は理想と現実のギャップに苦しんでいるからです。
さらに劣等コンプレックとはその劣等感を言い訳にして自分の人生の課題に取り組むことを避けることです。自分が劣っていることをひけらかす態度や行動も劣等コンプレックスと言えます。
劣等感をバネにし、理想と現実とのギャップを埋めようと頑張ることができる人もいます。
ライフタスク
ライフタスクとは、私たちが人生で直面する、必然的に取り組まなければならない課題のことです。
アドラーが提唱するライフタスクには3つのタスクがあります。
○仕事のタスク
役割・義務・責任が問われる生産活動への取り組みです。自然環境との関係、遊びも仕事のタスクに含まれます。「かかわり」程度の人間関係です。
○交友のタスク
友達や身近な他者との付き合いのことです。仕事のタスクと比べると他者との距離が近くなります。より親密な「つながり」という人間関係です。
○愛のタスク
異性関係、家族関係のことです。カップルから、夫婦、親子関係のことです。自分の性の役割や、性についての価値観を意識することも愛のタスクに含まれます。他のタスクに比べ 一番親密な「結びつき」です。ライフタスクの中では一番難しいものです。
この3つのタスクから逃げず、取り組むことで人間関係は良くなり、悩みも少なくなります。
さらに最近では対人関係のタスクとは別に2つのタスクも追加されています。
●セルフタスク
自分自身との付き合いのことで、生産性や競争とはかけ離れた遊びの課題です。リラクゼーションや、健康、趣味、遊びがこれに含まれます。
●スピリチュアルタスク
自分(人間)を超えたより大きな存在との付き合いのことです。大自然、神仏、宇宙との交流を通して、人生の意味を考えることです。瞑想、祈り、宗教儀式などが含まれます。
「今、何が問われているのか」を考え、どのタスクをこなすべきかわかるようになれば、人生の満足度が上がっていくことでしょう。
他者と良い関係を築くための6つの姿勢
1.尊敬:人にはそれぞれに年齢・性別・職業・役割・趣味などの違いがあっても、人間の尊厳には違いがないことを受け入れ、礼節を持って接すること。
2.信頼:根拠を求めず無条件に信じること。行為とそれをした人を分けて捉えること。
3.協力:目標に向けて仲間と合意できたら、共に問題解決の努力をすること。
4.共感:相手の置かれている状況、考え方、意図、感情などに関心を持つこと。
5.平等:各人の違いを受け入れつつ、対等の存在と認め、各人の最大限の自由を許容すること。
6.寛容:自分の価値観が絶対的なものではないことを知り、他者を自分の価値観ではかったり押し付けたりしないこと。 意見は意見として受け止め、批判・避難とみなさないこと。
この6つの姿勢が自分自身にあることで驚くほど苦手な人がいなくなっていきます。
人間関係でもめてしまった時の4つの対処法
- 本質的な問題か、どうでもいいような問題かに分けて考える
- 事実と意見を分けて捉える
- 最悪の事態はまずないと開き直る
- 怒りの感情をコントロールする
人間関係がうまくいく秘訣は人と適切な距離を取ることです。
そこで重要なのが、課題の分離です。
自分の課題と相手の課題を明確にし、踏み込まない、踏み込ませないことが大切です。
課題の見分けかたは、「その行動を行ったときの結果を引き受けるのは誰か」です。それは自分の課題なのか、相手の課題なのかを考え、相手の課題であった場合には自分は踏み込まなず、自分の課題であった場合には、相手に踏み込ませないことで、適切な距離をとるようにましょう。
ライフスタイル
アドラーが提唱した「ライフスタイル」とは性格のことです。ライフスタイルは変えられます。つまり、性格も変えることができます。
ライフスタイルを構成する3つの要素
・自己概念:自分の現状についての信念
「私はできる」と思えばその出来事を成功させようと努力するが、「私にはできない」と思えばできないことを探して自分にダメ出しをするようになってしまいます。
・世界像:世界の現状についての信念
「他人は信頼できない」と思ったら、周囲の人たちを頼ることができないが、「周りはみんな優しい人たちで溢れている」と思ったら、周りの人に頼ることもできるし、自分が人に手を差し伸べることもできます。
・自己理想:自己、世界の理想についての信念
「私は常に1位であるべきである」と思ったら、他者と比べ競争の中で生きていかなければいけないが、「それぞれ強みを生かしてチームを大きくしたい」と思っていたら、他者と協力していくことができます。
これらの3つの要素がお互いに影響しあいながら、ライフスタイルが決定されていきます。
ライフスタイルの作られ方は、「影響を与える要因」と「決定する要因」があります。
影響を与える要因は、身体的な影響(例えば、遺伝によるものや、生まれつきの劣等性)と環境の影響(例えば家族構成や、文化)によるものがあります。
決定する要因は、ひとつ、本人の自己決定によるものです。
最終的に本人のライフスタイルを決めるのは自分自身です。自分の性格は自分で決めることができるのです。今の性格が嫌だと思う人は、性格を変えることができます。まずはどうしてそういうライフスタイルなのか、何の影響を受けているのかを考え、それを踏まえた上で自分はどうしていきたいのかを決めましょう。
まとめ
【アドラー心理学入門】の本の中から、特にアドラーが提唱している重要とされる部分をアウトプットしました。自分で調べたことも追加して、後で読んでもわかりやすいように書きました。迷った時はぜひ戻って読んでみてください。
自分の考えとは違った新しいことを目の当たりにした時、受け入れるのに時間がかかったり、受け入れたくなかったりすると思います。思想・思考はあくまでもひとつの道だと思います。アドラー心理学に出会ってしまったから、これが全てだ!ということもないですし、別の心理学を否定するというのも違うかなと思います。
先人の考えを、上手に捉え、自分の人生に生かすことができれば、本を読む意味があるのではないかと思います。上手に取り入れて、悩みが少なくなり、幸せな人生を送れることを願っております。
コメント