『世界一楽しい決算書の読み方 著:大手町のランダムウォーカー イラスト:わかる KADOKAWA』
こんな人に読んでほしい
- これから株式投資をしようと考えている人
- 企業について調べたいと思っている人
- 自分の会社と他の会社を比べたい人
- 決算書を見るのが初めての人
決算書を見るのが初めての人でも、楽しく読めるように書かれている本じゃぞ!
重要な箇所は説明もあり、クイズ形式で決算書をみていく本なので、考えながら読むのが楽しいです。
決算書を読んでいる人はどんな人?
決算書を読む人は、投資家、銀行員、経営企画ポジション、本部長など様々です。
投資家は企業への投資の判断にしています。
銀行員は企業への融資の判断材料にしています。
経営企画ポジションの人、企業のお金の出入りを管理する経理や、事業計画を作成するための実績を把握します。
本部長クラスの人は、企業買収における買収価格の価格算定などをします。
優秀な就活生は、志望する企業の判断材料にすることもあるそうじゃ!
決算書はなんであるの?
上場企業は年に一回、決算書に事業内容の説明などを加えた書類である、「有価証券報告書」を3ヶ月に1回、有価証券報告書の経過報告的位置づけの「四半期報告書」をそれぞれ提出することが求められています。
非上場企業は決算書等の開示義務を貸されていない場合が多いですが、資金調達などといった特定のタイミングにおいては、投資家から決算書の開示を求められることがあります。
決算書はその企業に関わる人たちにおいて大事な書類です。利害関係者のみならず、経営者にとっても決算書は重要な書類です。
決算書に嘘の数字を書くと「粉飾」といい、それを防止するために「監査」制度があります。公認会計士という会計・監査の専門家が、第三者的な立場から、企業の決算書が合理的に正しい数値であるかを確認します。上場企業は監査を必ず受けなければならないと、会社法で定められています。
決算書とは
①貸借対照表(B/S)
②損益計算書(P/L)
③キャッシュ・フロー計算書(C/S)
④株主資本等変動計算書(S/S)
そのうち①〜③は特に重要で、「財務3表」と呼ばれます。
この財務3表の読み方を見ていきます!
決算書を見てわかること
- 会社がどのような資産を持っているのか
- 誰からお金を借りているのか
- 会社のお金はどれくらいあるのか「財務状態」
- 今年の売り上げはどれくらいか
- その売り上げのためにかかった費用はいくらか
- そしてどのくらい利益が出たのか「経営成績」
貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)
貸借対照表では財産に関する情報「財政状態」がわかります。
「B/S」と表記されるのは英語ではバランスシート(Balance Sheet)と呼ばれていて、その頭文字をとっています。
B/Sでは左側に「資産」をまとめ、右側には「負債と純資産」をまとめます。
資産の合計額(左側の合計額)と負債と純資産の合計額(右側の合計額)は必ず一致します。
- 資産:企業が保有している現金や建物などの情報
- 負債:企業の借金や債務の情報
- 純資産:経営者が会社を設立する際に入れたお金や、会社が利益を上げることで獲得したお金の情報
財政状態からわかること
①会社にどのような資産があるか「財産の状態」
②その資産を誰から、どのように調達してきたのか「調達の状況」
③企業の資産がどのような形で運用されているか「運用の情報」
資産の部
・流動資産(短期で資金を回収するもの)
現金、売掛金、商品
・固定資産(長期で資金を回収するもの)
土地、建物、車、備品
各企業がどんな資産を持っているのだろう?と言う視点で資産の部を見ると面白いぞ!
負債の部
・流動負債(短期で返済予定)
買掛金、短期借入金
・固定負債(長期で返済予定)
社債、長期借入金
退職給付引当金は退職金の支払いに備えてお金を引き当てているものなので、
その企業がどれくらいの退職金を支給する予定なのかを見込むことができるぞ!
純資産の部
・株主資本(株主に帰属する)
・資本金、利益剰余金
・その他(含み益など)
・評価換算差額、新株予約権
「純資産」は返済が不要な資金のことです。
負債の合計額が資産の合計額を超えた場合は、純資産はマイナスの値になります。(これを「債務超過」と言う。)上場企業は債務超過の状態が1年以上続くと上場廃止になってしまいます。
債務超過の企業は非常に危険な状態にあるので、純資産を見るときは企業が債務超過に陥っていないかどうかは必ずチェックするようにしましょう。
ただし、ベンチャー企業などは、事業拡大のための先行投資で、一時的に債務超過に陥ってしまっていることもあります。
損益計算書(そんえきけいさんしょ)
損益計算書は特定の期間における会社の経営成績を表します。
企業の1年の活動の中で、いくら売り上げて、いくら費用がかかったのか、そしてその結果、いくら利益が出たのかを記録したものです。
「P/L」は英語でプロフィット&ロス・ステートメント(Profit and Loss Statement)といい、その頭文字をとっています。
P/Lでは左側(借方)に「費用」をまとめ、右側(貸方)に「収益」をまとめます。
費用の合計額と収益の合計額には差が生じますが、それが「利益」(借方)や「損失」(貸方)となり、借方と貸方は一致します。
- 収益:企業が1年間に売り上げた金額
- 費用:従業員の給料や、広告費用など企業が1年間でかけた費用
- 利益や損失:収益と費用の差
利益の種類 5つ
- 売上総利益
- 営業利益
- 経常利益
- 税引き前当期純利益
- 当期純利益
売上総利益
売上高から原価を差し引いて計算します。
売り上げと原価が直接的に対応しています。「粗利」とも言います。
営業利益
売上総利益から販管費を差し引いて算出されます。
費用を含めて利益を計算することで、本業の本当の儲けである営業利益を計算できます。
販管費は、売上総利益を獲得するために、どれだけ企業が努力したのかを表示する項目で、広告宣伝費用や、従業員の給料が含まれるため、会社の経営スタンスが見える科目です。
販管費
- 給料
- 広告宣伝費
- 運送費
- 地代賃貸
- 減価償却費
- 外注費
本業とは 企業は自社のルールブックに当たる「定款(ていかん)」を作成します。その定款の中には企業がどのようなビジネスをするのかについて記載をする場所があり、そこに記載されたものが本業となります。(例えばリンゴを仕入れて売る会社であれば、りんごの仕入れ販売と記載していて、りんごの仕入れ販売が本業、それ以外のビジネスから得た収益は本業以外の収益のため営業外収益に記載されます。)
経常利益
経常利益は本業で獲得した営業利益に、本業以外で獲得した収益(本業外収益)を加算し、費用(営業外費用)を控除して算出されます。
例えば、本業以外で株取引を継続的に行っている会社の場合、株取引により利益を生めば、それは会社の利益に貢献しますが、本業で儲けているわけではにので、営業外収益や費用に計上されます。
これらは全て継続的に行われる活動により獲得した利益なので、会社の実力が一番反映される利益と言えます。
税引き前当期純利益
特定の期間に発生した全ての事象を加味して算出された利益のことです。経常利益に、特別損益といった毎期のように発生しない事象(火災損失や、事業売却など)から発生した利益や損失を加算して算出されます。
当期純利益
税引き前当期純利益から法人税等の税金コストを控除することで算定されます。
売上高から、各種の発生した費用を引いていき、最後に当期純利益が残ると言うイメージです。
P/Lのまとめ
・P/Lは「収益」「費用」「利益」の3つから構成される。
・収益は企業が事業を行って生み出した成果が記載される。
・費用は収益を生み出すために要した努力が記載される。
・利益は収益ー費用で算出される。
キャッシュ・フロー計算書
その企業の現金・預金がどのくらい増減したのかを計算する書類です。
英語ではCash Flow Statementで頭文字をとって「C/S」と表す。
またキャッシュ・フロー(Cash Flow)と言う言葉に対しては「C/F」と表す。
企業の活動には「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つがあります。C/Sはこの企業の活動から得られた収入から、外部への支出を差し引いて手元に残る資金(現金)を計算するものです。
黒字倒産の意味
利益がプラスでもキャッシュ・フローがマイナスになることがあります。
利益が出ているのに、カード支払いなどにより、現金が足りなくなっている状態です。それでは支払いができずに信用を失った結果、倒産に陥ってしまいます。このような事態を避けるためには、現金預金の残高の動きを常に把握しておく必要があります。
営業活動
本業の営業活動による現金預金の増減
・営業活動によるキャッシュ・フロー(営業C/F)がプラス
本業によってしっかりと現金預金が回る状態にあり、順調な状態です。プラスの分を投資活動の財源にしたり、株主への利益還元の財源にしたりすることがあります。
・営業C/Fがマイナス
他の投資活動や財務活動でそのマイナスを補う必要があります。事業を早急に改善していく必要があります。
投資活動
固定資産や株式などの投資による現金預金の増減
投資活動によるキャッシュ・フロー(投資C/F )によって、現金を支払ったのであればマイナスになり、設備や株を売却して現金を受け取ったのであればプラスになります。
営業活動や財務活動によって流入した現金を投資して、事業拡大を目指した動きを取れているかがポイントです。投資を行わないと現状維持のまま終わってしまいます。
投資C/Fが大幅にプラスである会社は事業を縮小しようとしていると捉えることができる場合もあります。
企業の投資方針や経営スタンスを推測することができます。
財務活動
資金調達や借入金の返済等による現金預金の増減
財務活動によるキャッシュ・フロー(財務C/F)は資金を調達して現金預金が増えたらプラスで、減ったらマイナスになります。企業が上場した場合、そのタイミングでの財務C/Fは非常に大きくなることが多いです。
営業・投資・財務活動の動向パターン:6種類
①健全型C/S
本業で資金を獲得し、その資金で投資、借入金の返済を行っている
営業活動↑投資活動↓財務活動↓
企業のあるべき姿
②積極型C/S
本業で資金を獲得し、投資を行い、足りない分を借り入れている
営業活動↑投資活動↓財務活動↑
事業拡大フェーズの企業に多いキャッシュ・フロー
③改善型C/S
本業と設備売却で資金を得て、返済にあてている
営業活動↑投資活動↑財務活動↓
事業を縮小しようとしている企業に多いキャッシュ・フロー
④衰退型C/S
本業から資金が流出しており設備を売却し返済を進めている
営業活動↓投資活動↑財務活動↓
事業が衰退している企業に多いキャッシュ・フロー
⑤勝負型C/S
本業で資金が流出しているが借入によって投資を行っている
営業活動↓投資活動↓財務活動↑
資金繰りが厳しい企業に多いキャッシュ・フロー
ベンチャー企業などでよく見られる。
⑥救済型C/S
本業で資金が流出しているため、設備を売却し、さらに足りない分を借り入れて対応している
営業活動↓投資活動↑財務活動↑
かなり厳しい企業に多いキャッシュ・フロー
クイズ形式の内容では
貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書をそれぞれ見比べ、
企業戦略や企業経営状況を読み取り、その決算書がそれぞれどの企業のものかを当てます。
解説も丁寧に書かれていて、短な企業について考えることができます。
読んだ感想
決算書は数字と文字がたくさん並べられていて、何をどう理解したらわからない、難しいと思っていましたが、この本は、決算書を読むことに興味を持たせてくれます。
本の中に出てくるクイズでは決算書をわかりやすく表してくれて、見方のコツがわかれば解けるような問題です。考え方も教えてくれていて、企業によって戦略や販売の方法が全く違うことに驚きました。
決算書を難しい書類だと思ってなかなか読む気が起きなかった人に、最初に読んで欲しい本だなと思いました。
図もわかりやすく、覚えやすいので、これから勉強しようと持っている人にはおすすめです!
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